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解説文・志村有弘。
1946年北海道生まれの版画家、多賀新(たがしん *本名多賀新一)による銅版画集。春陽堂から出版されている「江戸川乱歩文庫」全30冊の表紙を飾った銅版画を収録。
銅版画なので適切な表現ではないかと思いますが、非常に細かな「描き込み」が特徴です。とは言ってもアウトサイダー・アートのような狂気を感じさせるものではなく、繊細で職人的工芸といった雰囲気です。
作風を一言で表現するなら「エロチック」でしょうか。艶かしい雰囲気の女性や乳房、(露にはなっていませんが)女性器などが描かれていることが多く、性(と生)をモチーフにした作品がほとんどです。かといって下卑た「ポルノグラフィック」にはなっておらず、幻想的で神話的な世界観を持っています。
どの作品にも静寂感が漂い、そのせいかパッと見は悪夢風なのになぜかしら安らぎすら感じます。
新刊での購入は難しいでしょうが、興味が湧いたら是非。
江戸川乱歩ファンにも一見の価値はありそうです。
さらに「エロチック」なものをお望みなら、『多賀新 ミニアチュール銅版画集』をオススメしますが、こちらの入手はもうすこし難しいでしょう。
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ユング心理学の第一人者で、臨床心理学者の河合隼雄と、宗教学者中沢新一による仏教に関する対談集。「はじめに」で河合隼雄本人が言っているように、「教師」中沢新一の授業を受けている「生徒」河合隼雄の授業の記録といった内容です。
古本屋で手に取ってパラパラ立ち読みしたのですが、もちろん仏教に興味はありますが、購読の決め手は「律蔵」の話でした。
この本によると、律蔵というのは戒律を集めたものなのですが、そのなかに性に関する戒律があります。性に関する戒律はどんな宗教にもあるという印象がありますが、いやぁ仏教の戒律がこんなに面白いものだったとは。
その内容をあけすけに言ってしますと、「こんなセックスをしてはいけない」「こんなオナニーをしてはいけない」
仏教の戒律というものは、例えばキリスト教のそれとはだいぶ性格が違うとのことなのです。イメージで言えば、キリスト教の戒律は「憲法」で、仏教の戒律は「校則」となるでしょうか。憲法の規定が抽象的で、しばしば「解釈」を必要とするのとは対照的に、校則の場合はかなり具体的です。スカートの丈うんぬんとか。
その調子で、性に関するさまざまな「これはダメ」「これはギリギリ...オッケーか?」の具体例が挙げられているのです。弟子の具体的な行動に対し、釈尊が判断を下すという「判例集」なのです。
中沢新一は山上たけひこの『喜劇新思想体系』を連想したと言っていますが、いや正に。健全な男性諸氏の「工夫」の涙ぐましいこと。
それはともかく、非常に読みやすい本です。学術的な正確さを求めていける本ではないと思いますが、仏教の手触りを感じることができると思います。
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『TRAVELERS』

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ヴァージニア出身のWalter Martinとスペイン出身のPaloma Munozによる、不思議なスノーグローブ作品集。
スノーグローブと言うと可愛らしく幸せな光景を閉じ込めたものが一般的だと思いますが、これはほとんどがシュールな光景です。
例えばこの表紙。人々は次々と海に飛び込んでいます。なぜかはわかりませんが。
他にも、子供を井戸に投げ込もうとしている農夫だったり、木の幹に頭を突っ込んでいる人々(としか説明のしようがない)光景だったり。
とにかく「これはいったいどういう状況なんだろう」と考えるのが楽しい作品です。不条理な感じが好きな人にはオススメです。
洋書ですがAmazonでわりと手頃な値段で買えます。
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はたよしこ編著、ボーダレス・アートミュージアムNO-MA企画、紀伊国屋書店。

現在、松下電工汐留ミュージアムで開催中の展覧会「アール・ブリュット/交差する魂」の図録も兼ねている本。展覧会も行ってきました。
斎藤環の精神医学的論考なども収められていて、単なる図録以上の読み応え。

個人的には、日本人のアウトサイダー・アーティストたちを知ることができて興味深かった。
もちろんアウトサイダー・アートの世界では、日本人のアーティストかそうでないかということは作品において意味は無いと思う。彼らは特定の文化を背負ったりはしていないのだから。しかし「アウトサイダー・アート(または「アール・ブリュット」)」という概念が海外からやって来ているせいか、本などで触れることができるアウトサイダー・アートは海外のものが多い気がする。となってくると、わが国のアウトサイダー・アート事情はどうなのかという気になってくるのも当然で、展覧会でその一端にでも触れることができて良かった。

まず展覧会を観に行って直接作品に触れて、それから本書を手に取られたほうが良いと思います。
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タイトル通り、映画『ブレードランナー』を読み解く論考。
あとがきに「本書はいまのところ世界で最も網羅的な『ブレードランナー』論である」「本書は作品論であると同時に映画技法論である。映画史論であると同時に映画理論である」とあるのも納得の読み応え。「もっぱらテクスト論的立場から解きほぐして」ゆきます。
この本ではディレクターズカット版ではなく、1982年の公開版(「プロデューサーズカット」)を分析対象としています。「監督がかならずしもプロデューサーよりも賢明な選択をするわけではないということの歴史的証左ともなる」と述べて、その理由も明らかにされてゆきます。
さらに、映画を観ての私個人の感想も交えて言うなら、「デッカードははたしてこの映画の『真の』主人公と言えるのだろうか」「ロイこそが『真の』主人公ではないのか」と感じた人なら、この本を読んでその直感に論拠が与えられてゆくことが楽しいかもしれません。
10本の映画をただ観るよりも、『ブレードランナー』とこの本を読むほうが映画についての勉強になるかもしれません。そのぐらい『ブレードランナー』という映画を色々な角度から徹底的に解剖し、様々なことに言及してゆきます。
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